ECサイトを運営するうえで、「どの決済方法を採用するか」は売上や顧客満足度を左右する重要なテーマです。決済は、購入率やリピーター獲得に大きな影響を与えます。
近年、キャッシュレス化の進展やクレジットカード決済の3Dセキュア導入義務化など、決済方法をめぐる環境は目まぐるしく変化しています。このような状況の中で、自社のECサイトに最適な決済方法をどのように選定し導入すればよいのでしょうか。
本記事では、最新のトレンドを踏まえて、最適な決済方法の選び方をご紹介します。
目次
ECサイトで使われている主な決済方法とそれぞれの特徴
ECサイトで利用される決済方法には多数の種類があり、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持っています。
まずは、代表的な7つの決済の特徴をみていきましょう。
クレジットカード決済
最も一般的な決済方法で、利用者も圧倒的に多いのがクレジットカード決済です。
近年では3Dセキュア導入義務化などによる影響で、新規導入のハードルが高くなっていますが、まだまだ代表的な決済方法といえるでしょう。
メリット
- 利用者数が多く、購買機会を逃しにくい
- 即時決済
- ポイント還元や分割払いなどの付加価値がある
デメリット
- 不正利用によるチャージバックなどのリスク
- 本人認証の手間によるカゴ落ちのリスク
銀行振込
購入者が指定された銀行口座へ直接振り込む決済方法です。決済会社との契約が基本的に不要なため、個人・法人を問わず利用することができます。
メリット
- 決済会社との契約が不要なため、導入しやすい
- キャッシュフローを管理しやすい
デメリット
- ユーザーによる支払忘れや遅延が発生しやすい
- 振込手数料が発生
- 入金消込などの手間が発生
代金引換(代引き)
商品を受け取る際に、配達員に現金や電子マネーで代金を支払う決済方法です。現金主義のユーザーに根強い支持があります。
メリット
- 商品到着まで支払いが発生しないため、ユーザーにとって安心感がある
- 未払いリスクが低い
デメリット
- 受取拒否や長期不在による商品返送のリスク
- 代引き手数料が発生
コンビニ決済
全国のコンビニで支払いができる決済方法です。ユーザーは、注文後に発行される受付番号を使い、コンビニの端末やレジで決済を行います。
メリット
- 24時間365日支払いが可能
デメリット
- ユーザーによる支払忘れや遅延が発生しやすい
- コンビニ手数料が発生
後払い決済
商品到着後に請求書を受け取り、一定の期限内に支払う決済方法です。保証会社や決済代行会社が代金回収の役割を担います。
メリット
- 商品を受け取ってから支払いできるため、ユーザーにとって安心感がある
- 代金回収のリスクを保証会社が負担してくれる
デメリット
- 保証会社を介するため、決済手数料が高い傾向
- ユーザーによっては与信審査が下りない
キャリア決済
携帯電話の利用料金と一緒に決済金額を支払う方法です。ドコモ・au・ソフトバンクの3大キャリアがそれぞれ提供しています。
メリット
- スマホから簡単・スピーディに決済できる
- 携帯利用料金とまとめて請求されるため、支払管理しやすい
デメリット
- 月々の利用上限が設定されているため、高額商品には不向き
- 3大キャリアを利用していないユーザーは決済できない場合がある
QRコード決済
スマートフォンの決済アプリを利用し、QRコードをスキャンして支払う方法です。現在、若年層を中心に急速に普及しています。
メリット
- スマホから簡単・スピーディに決済できる
- ポイント還元やキャンペーンが多く展開されるため、ユーザーにとってお得
- 今のところ不正利用が少ない
デメリット
- シニア層の普及率が低い
上記で挙げた決済以外にも、各種電子マネー決済・Amazon Pay・PayPal 決済などの決済方法があります。
決済ごとのメリット・デメリットを理解し、それぞれを比較することが重要です。
自社サイトに合った決済方法を選ぶための比較ポイント
ECサイトの成功には、ターゲットユーザーや取り扱う商材に適した決済方法の選定が欠かせません。ユーザーにとって利便性の高い決済方法を導入することで、売上アップや顧客満足度の向上につなげることができます。
2つの視点から見ていきましょう。
ターゲットユーザーとの相性
導入する決済方法は、ターゲット層の年代や購買スタイルに合っているかを見極めることが重要です。年齢層ごとに、好まれる決済方法には傾向があります。
年齢層 | 傾向 | おすすめの決済 |
---|---|---|
10~20代 | 手軽でスピーディーな支払いを好む | QRコード決済、キャリア決済、コンビニ決済 |
30〜40代 | クレジットカードの利用が一般的で、ポイント還元なども重視 | クレジットカード決済、QRコード決済、後払い決済 |
50〜60代 | セキュリティや信頼性を重視し、現金での支払いに安心感を持つ人も | クレジットカード決済、銀行振込、代金引換 |
若年層はスマートフォンを活用したQRコード決済やキャリア決済、コンビニ決済など、手軽でスピーディーな支払い手段を好む傾向があります。
一方シニア層では、現金でのやり取りに慣れているため、代金引換や銀行振込といった従来型の決済方法も支持されやすいです。
ターゲットユーザーの年齢層やデジタルリテラシー、購買習慣を分析したうえで、ユーザーが安心して利用できる決済方法を用意することが、コンバージョン率の向上と離脱率の低下に直結します。
販売商材・サービスとの相性
取り扱う商材・サービスの種類や価格帯によっても、相性の良い決済方法は異なります。商品の価格帯や販売形態、支払いのスピード感に合わせて、最適な決済方法を検討しましょう。
商品ジャンル | 傾向 | おすすめの決済 |
---|---|---|
高額商品 | 安心感と分割払いのニーズが高い | クレジットカード決済(分割払い)、銀行振込 |
低額商品 | 手軽でスピーディな決済が求められる | QRコード決済、キャリア決済 |
物販商品 | 商品が届いてから支払いをしたいニーズが一定数ある | 後払い決済、代金引換 |
デジタルコンテンツ・サービス商品 | 即時決済・即時利用が前提 | クレジットカード決済、QRコード決済 |
たとえば、大型家具やジュエリーなどの高額商品は、分割払いのできるクレジットカード決済の導入をしておくとよいでしょう。一方、単価の低い日用品や消耗品などは、購入率アップのため、手軽に決済できるQRコード決済やキャリア決済の導入が効果的です。
また、物販商品は商品を確認してから支払いたいというニーズも根強いため、後払い決済の導入もおすすめです。デジタルコンテンツ系は原則即時利用のため、スピーディな決済が求められます。
このように、商品の価格帯や販売形態とのバランスを考慮して、自社の製品・サービスに適した決済方法を導入することが大切です。
ユーザーの満足度を高めるには複数決済の導入が必要不可欠
さて、ここまで代表的な決済方法の特徴や、選定のポイントを見てきました。
いよいよ、自社のECサイトにどの決済方法を導入するかを具体的に検討する段階です。
その際に重要なのが、「ひとつの決済方法に絞らない」という視点です。
可能であれば2種類以上の決済を導入することをおすすめします。その理由は、ユーザーごとに使いやすい決済方法が異なるためです。
たとえば、クレジットカード決済は多くのユーザーに利用されていますが、クレジットカードを持たない若年層や、現金払いを好むシニア層には対応できません。複数の決済方法を用意しておけば、ユーザーが自分に合った支払い方法を選択できるため、購入途中で離脱するリスクを下げることができます。
SBペイメントサービス株式会社「ネットショップで物品を購入する際の決済手段に関する調査」
https://www.sbpayment.jp/news/press/2024/20240718_001374/
図表のように、「利用したい決済方法がなかったから購入をやめた」というケースは珍しくありません。反対に「いつも使っている決済方法があったからこのサイトを選んだ」というポジティブな理由につながる場合もあります。
このように、複数の決済方法をバランスよく導入することが、ユーザーの満足度を高めつつ、購入率を向上させる大きなポイントになっています。
なお、複数の決済方法をまとめて管理できる決済サービスを活用すれば、契約や運用の手間を減らすことができ、管理コストの削減にもつながります。
ECサイトの決済のトレンドと今後【2025年版】
ECサイトにおける決済方法は、近年ますます多様化し、利便性とセキュリティの両立が求められるようになっています。2025年は、特に「クレジットカード決済のセキュリティ強化」と「キャッシュレス決済の急成長」が大きな話題と言えるでしょう。
以下の図表をもとに、最近の傾向を整理していきます。
総務省「令和5年通信利用動向調査報告書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202300_001.pdf
クレジットカード決済のセキュリティ要件が強化
図表によると、ECサイトで最も利用されている決済方法はクレジットカード決済であり、2023年(令和5年)の利用率も非常に高い水準を維持しています。
しかし、クレジットカード決済を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。
特に注目されているのが、「3Dセキュア(本人認証)」です。3Dセキュアとは、カード番号などの情報に加えて、パスワードやSMS認証などの追加認証を行うことで、不正利用を防止する仕組みです。
日本でも段階的に導入が推進され、2025年3月、ECサイトのクレジットカード決済では3Dセキュアの導入が義務化されました。
さらに、新規加盟店には「セキュリティ・チェックリスト」に基づくセキュリティ対策の実施状況の申告が求められるなど、従来と比べてクレジットカード決済導入のハードルが高くなっているのが現状です。
ユーザーにとっても認証ステップが増えることで、操作性がやや煩雑になる側面があり、従来よりカゴ落ちのリスクが増えてしまうケースが想定されます。
とはいえ、こうした背景がある中でも、クレジットカード決済は依然として最も広く使われている決済方法であり、引き続きECサイトにおいて欠かせない決済の一つであることは間違いありません。
キャッシュレス決済の成長が著しい
注目すべきなのが、QRコード決済を含むキャッシュレス決済の急成長です。
図表によると、QRコード決済などの「電子マネーによる支払い」は2021年(令和3年)には28.1%だったのが、2023年(令和5年)には38.5%と、2年で10ポイント以上の増加を見せています。
この背景には、スマートフォンの普及に加え、「支払いが早くて簡単」「ポイント還元がある」などのユーザー側のメリットが多くあり、特に若年層を中心に支持を集めています。
今後もQRコード決済はキャッシュレス化の中心としてますます普及していくことが予想されます。特にモバイルファーストなユーザー層をターゲットとするECサイトでは、積極的な導入がカギになるでしょう。
▼こちらの記事もチェック!
・2025年3月までのEMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)導入義務化について
・クレジット決済導入時のセキュリティ・チェックリストとその対処
まとめ
ECサイトで売上を伸ばすためには、ユーザーの立場に立った決済方法の選定がとても重要です。誰に、どのような商品を、どんな価格帯で販売するのか。その条件によって、求められる決済方法は変わってきます。
ターゲットユーザーの傾向や、扱う商品の単価・ジャンルに応じて、バランスを考慮した決済方法を選びましょう。また、複数の決済方法を導入することで、幅広いユーザーのニーズに応えやすくなり、カゴ落ちを防ぐことにもつながります。
クレジットカード決済のセキュリティ強化やキャッシュレス決済の普及など、決済に関する環境は年々変化しています。
こうした最新の動向を常に把握し、必要に応じて決済環境を見直すことが、長期的なサイトの成長と顧客満足度の向上につながります。
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