WordPressでECサイトを構築する際には、レンタルサーバーとの契約が必要になります。利用するサーバーを選ぶ上で重視すべきポイントには、どのような点が挙げられるのでしょうか。
本記事では、WordPressでECサイトを構築する上で「サーバー選びが重要となる理由」、「サーバー運用の主な課題」、「主なサーバータイプと選ぶポイント」などを、わかりやすく解説します。
目次
ECサイトのサーバー選びが重要である理由
弊社は、ECシステムのプロバイダーであるという立場から、たくさんのユーザーからの相談を受けたり、実際にサイトの状況を見せていただいたりしています。そこで浮かび上がる、サーバーの選択やその設定に起因する問題点は次のようなものです。
クレジット決済が失敗する
運営者にとっては耐えられない機会損失となります。ページの表示が遅い
お客様は表示の遅いサイトを嫌います。またSEOにとっても悪影響を与えます。暗号化(SSL)されていない
お客様の個人情報を垂れ流しにしているといった意識が必要です。環境が古く脆弱性が残ったままになっている
いつサイト改ざんにあっても不思議ではない状況です。
これらは、必ずしもサーバーに原因があるものばかりではありませんが、少なくともサーバーが原因でそのようなことが発生している状態は避けたいものです。なぜならば、一度サーバーを決めCEサイトを構築すると、簡単には別サーバーへの引っ越しができないからです。
サーバーの引っ越しにはコストがかかります。サーバー移行の知識がなければ業者に委託することになるでしょう。これにはかなりの費用(10万円〜30万円ほど)が掛かります。また、引っ越しにはそれ相応の時間(1日〜2日)が必要で、その間はサイトを閉じなくてはいけないということになります。
だからこそ、最初に決定しなくてはいけないサーバー選びが重要で、コストと将来を見込んだ選択をしなくてはいけないことになります。
WordPressでのECサイト運用の課題とは?
WordPressでECサイトを構築、運営する上での主な課題には以下のようなものがあります。
WordPressのインストール
WordPressはサーバーにインストールして利用するものです。知識がなければ自分でインストールはできないので、簡単にインストールできる、あるいはインストール済みのサーバーが選択基準となります。サイトの成長と環境のミスマッチ
ようやくお客様が来るようになり、いよいよというところでサイトのレスポンスが悪く感じることが出てきます。アクセス数(トラフィック)の増加、あるいはデータ量の増加によるサーバーリソース不足が原因です。もちろんテーマの構造やプラグインの利用などでの悪化もありますが、同じ状況下で変化したのであればサーバーに起因する可能性が高いでしょう。
また、イベントや売り出しで一時的にアクセスが増えることもあれば、メディアに紹介されて急激にアクセスが増えることもあるでしょう。このようなチャンスを逃すのはもったいないものです。環境のアップデート
WordPressはとても優れたシステムです。WordPress本体と構成するプラグインは、脆弱性が判明するとすぐに修正版がリリースされます。管理画面から更新をクリックするだけでアップデートが可能です。脆弱性が出たからサイトを作り直さなくてはいけないということにはなりません。
ただ、この更新を行うと不具合が発生する場合があります。それを恐れて更新しないユーザーも多いですが、脆弱性を残す方がはるかにリスクが高いことを認識しなくてはいけません。
また、頻度は少ないですがPHPのアップデートも避けて通れません。これはサーバーで行うものですが、運が良ければ簡単に完了するでしょう。悪ければ真っ白になって何も表示されないということも起こりえます。
このような更新メンテナンスは運営者にとっては非常に負担です。安くアウトソースできるものであればそうしたいものです。セキュリティ
ECサイトに限らずWebサイトは全て、常に外部から悪戯や攻撃を受けています。お客様の個人情報を預かっているECの運営者としては、これらの攻撃からしっかりと守らなくてはいけないという義務があります。バックアップ
WordPressのようなCMSのほとんどはデータベースを使用しています。このデータが壊れると場合によっては全く表示できなくなります。そうなると復旧も難しくなります。稀ではありますがそういう事故も起こり得るということを認識しなくてはいけません。そのためバックアップが必要となります。
サーバーで自動的に取ってくれるバックアップは、一日1回定期的に取ってくれるものですが、リストア(バックアップの復元)すると、データがその時間に戻ってしまう(それまでの注文データが消えてしまう)ので気軽に行えるものではありません。プラグインなどで補完する方法が考えられます。
主なサーバーのタイプ
サーバー選びのポイントをまとめる前に、サーバーのタイプを押さえておきましょう。
ここでは、サーバータイプを「共有レンタルサーバー」、「クラウドサーバー」、「専用サーバー」の3つに分け、それぞれのメリット、デメリットを比較してみます。
共有レンタルサーバー
特徴 | デメリット |
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クラウドサーバー
特徴 | デメリット |
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専用サーバー(マネージドサーバー)
特徴 | デメリット |
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ECサイトに最適なサーバー選びのポイント7つ
前述しました「WordPressでのECサイト運用の課題」をできるだけ克服できるようなサーバーを念頭に、ECサイトに最適なサーバー選びのポイントを押さえてみましょう。
WordPress導入ハードルの低さ
自社にエンジニアがいるのであればどのサーバーでも良いですが、一般的にはWordPressのインストール方法なんて知る必要はないですよね。ここは、簡単インストール機能があるサーバーや最初からインストールされているサーバーを選びたいところです。 共有レンタルサーバーの多くは、簡単インストール機能を提供しているようです。また、既にインストールされているものは一部のクラウド型サーバーにあるようです。
スケールアップの容易さ
スケールアップとは、サーバーのスペックを変更できることを表しています。 サーバーの引っ越しにはコストと時間がかかるというお話は前述の通りです。ヤドカリのように、成長に合わせて殻を簡単に変えられれば将来への不安はなくなります。また、イベント時にだけスペックを上げ下げできる柔軟性があると最高です。このような観点から見るとクラウド型のサーバーが最適と言えます。 クラウド型はWordPressインストールのハードルが高いものが多いですが、一部のサービスではインストール済みのものがありますので、そういったサービスを利用するのが良いでしょう。
セキュリティが強い
セキュリティにはいろいろなハードルがあります。例えば、SSL(通信の暗号化)、WAF(悪意あるアクセスから防御)、ブルートフォース対策(ログイン試行)、アクセス制限(連続アクセスの防御)など様々です。これらはプラグインで対応できるものもあるので、サーバーの要件としてはほどほどでよいかと思います。 また、クレジット決済を行いたい場合、決済会社からセキュリティーチェックリストを渡され、それらの対策が取れることを約束する必要があります。そのセキュリティーチェックリストもまた、サーバーの面とカートシステムの面の両方からの対策となります。
サイトの表示スピードが速い
ページの表示が遅くなるのは大きく2つの要因が考えられます。一つはサーバーの処理能力の問題です。アクセスが多くなってきて処理しきれなくなってきたときや、データが膨らんできてレスポンスが悪くなってきたときはサーバーのスペック不足と考えます。 もう一つは、テーマの構造が最適化されていないあるいは、負荷の高いプラグインを多用しているなどが考えられます。 後者は運用の問題ですが、前者はサーバーに大きく依存するので、ここでもやはりスケールアップが容易なクラウドサーバーが有利となります。
メンテナンスの容易さ
サーバーのメンテナンス自体は、基本的にサーバー会社がやってくれるのでそれほど問題にはなりません。非常に重要なのは、WordPressやプラグイン、テーマのメンテナンスの方です。これらの更新はかなり頻度が高いものです。また更新の際にエラーが発生したり、表示が崩れてしまったりということもしばしば起こります。こういったメンテナンスを行ってくれるサーバー会社はほとんどなく、特殊なサービスを行っている一部の会社のみです。 このようなメンテナンス費用もサーバー代に含まれているとしたら、とてもありがたいものです。
充実したサポート
サーバー自体は、どこも稼働率99%以上を保証しておりトラブルはほとんど無いと言えます。メールでのサポートなども充実しています。ただ、システムの不具合に関しては、サーバー会社はサポートしてくれません。ですので、先ほどもお話ししましたが、更新を行ってエラーが出てしまった時などはサーバー会社ではサポートしてもらえないのが実情です。 このような時でもしっかりとサポートしてくれるサービスがあったとしたら、これもとてもありがたいものです。
コスパの良さ
初期費用や月額料金、オプション料金といったコスト面も、サーバー選びの重要ポイントのひとつです。 料金の安さだけに注目せず、提供される機能やサポートとのバランスを十分に考慮し、コストパフォーマンスが優れたサーバーを選ぶようにしましょう。 また、立ち上げ時に想定される売上高やアクセスだけでなく、ECサイトが成長した際に必要となるコストについても、確認することが大切です。(引っ越ししなくてはいけないかどうかなど)
以上、WordPressでECサイトを運用するには、クラウドサーバーを選択するのが良さそうです。後は導入ハードル、サポート、コストなどの面からどのクラウドサービスが良さそうかを判断していくことになるでしょう。
次のセクションでは、弊社が独自に調査したクラウドサーバーの主なサービスの比較を行ってみます。
WordPressのECサイトに適したクラウドサーバー比較
業界大手のサーバー2社と、クラウドサーバーを提供している3社から、以下のサービスを比較してみました。サービス内容は変更されていくことが想定されますので、最終決断時にはサーバー会社に直接お問い合わせください。
Welcartクラウド | さくらのマネージドサーバ | XServer Business | ロリポップマネージドクラウド | wpXspeed | |
初期費用 | 無料 | 17,600円 | 16,500円 | 無料 | 無料 |
月額費用 | 11,000円~ | 7,485円~ | 3,762円~ | 従量課金制 (1,348円+コンテナ起動料) |
1,320円~ |
WordPressデータ移行代行 | 無料 | 10件まで無料 | 10件まで無料 | ✕ | △ |
WordPress保守サービス | 〇 プラグイン更新 PHPアップデート 不具合対応 |
✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
WordPressインストール機能 | インストールして提供 | 〇 | 〇 | 申込時に選択 | 〇 |
DNS設定代行 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
スケールアップ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
自動バックアップ | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
メールサポート | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
電話サポート | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
メールホスティング | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
まとめ
WordPressでECサイトを構築する際のサーバー選択は、サイトの安定性と将来の成長に大きく影響します。本記事での検討から、クラウドサーバーの中でも、特にWordPressの運用管理まで含めたサポートを提供するサービスが最適という結論に至りました。
その理由として、ECサイトの運営では、セキュリティ対策や日々のアップデート管理が必須である一方、これらの作業は専門知識を要し、また更新時の不具合リスクも伴います。プラグインやテーマの更新メンテナンス、さらにはそれらの不具合発生時のサポートまでカバーするクラウドサービスを選択することで、運営者は本来の業務に専念できます。
また、クラウドサーバーならではの柔軟なスペック調整により、サイトの成長やアクセス増加にも迅速に対応できます。サーバー移転の手間やリスクを考えると、初期費用が多少高くても、長期的には効率的な選択といえるでしょう。
結論として、WordPressの運用管理サポートが充実したクラウドサーバーを選択することで、安定したECサイト運営の基盤を構築することができます。
Welcartクラウドは、このような要望から生まれたサービスです。興味がありましたら以下のページをご覧ください。