この記事では、WordPressを使ったECサイト構築の検討をされている方向けに、WelcartとWooCommerceという2大プラグインの比較を中心とした解説記事をお届けします。WordPressならではのメリットや注意点、さらに日本市場での使いやすさを踏まえた選び方などを詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
WordPressでのECサイト構築
WordPressでECサイトを構築するという選択肢
WordPressは、世界で最も利用されているCMS(コンテンツ管理システム)です。2025年現在、全世界のWebサイトの約40%以上がWordPressで構築されているという統計もあり、個人ブログから大規模メディアサイトまで幅広く活用されています。日本国内でも非常に多くのユーザーが利用しており、「管理画面が使いやすい」「豊富なテンプレート・プラグインがある」といった理由で高い人気を誇っています。
そんなWordPressですが、実はECサイトを構築する際にも有力な選択肢となります。専用のECカートサービスや大規模ECパッケージだけでなく、WordPressのプラグインを活用することで、比較的手軽かつ柔軟にネットショップを運営できるからです。
WordPressでECサイトを構築する流れ
WordPressでEC機能を追加する場合、基本的には以下の流れになります。
- WordPressをインストール・初期設定
- EC用プラグイン(後述のWelcartやWooCommerceなど)を導入
- テーマ(デザインテンプレート)の選定・設定
- 決済や配送などの詳細な初期設定
- 商品登録・在庫管理・セキュリティ対策の実施
WordPress本体のインストールは、サーバー契約やドメイン取得を行い、管理画面から設定を進める形が一般的です。最近は「WordPress簡単インストール機能」を備えたレンタルサーバーが多いので、初心者でも比較的スムーズに構築を始められるでしょう。
WordPressでのEC構築概要とメリット・デメリット
WordPressでECを構築するメリット
費用を抑えやすい
WordPress自体はオープンソースソフトウェアのため、基本的にはライセンス費用がかかりません。有料のテーマやプラグインを導入することもありますが、専用のECサイト構築サービスや大規模パッケージに比べると、トータルでのコストを抑えやすい傾向があります。
デザインや機能を柔軟にカスタマイズできる
WordPressはプラグインやテーマが豊富に用意されており、EC機能以外にも予約システムや会員サイトなど、多彩な拡張が可能です。デザイン面も自由度が高く、低コストでも個性的なネットショップを作りやすいのが特徴です。
運用しながらのSEO対策が容易
WordPressはもともとブログCMSとしての性質が強く、記事投稿やSEOに強い構造が整っています。ECサイトでありながら、ブログ的な情報発信を組み合わせることで集客に結びつけやすくなります。プラグインを利用すれば、さらにSEO対策を強化することも可能です。
WordPressでECを構築するデメリット・注意点
サイト運営・管理の手間がかかる
WordPressでのECサイトは、更新作業やセキュリティ対策を自分たちで行う必要があります。セキュリティプラグインやバックアッププラグインを導入し、常に最新バージョンにアップデートしていくなど、ある程度の知識と運用体制が求められます。
大規模・高負荷なサイトではサーバー環境が重要
WordPressは機能を拡張するほどサーバー負荷が大きくなりがちです。アクセス数の多いECサイトや商品点数が膨大な場合、レンタルサーバーでは処理が追いつかないケースもあります。大規模運用を視野に入れるなら、専用サーバーやクラウドサーバーなど、より性能の高い環境を検討する必要があります。
信頼性の高い決済連携が必須
ECサイトとして運営する以上、顧客のクレジットカード情報や個人情報を扱う場面が発生します。プラグインや外部サービスを使って安全性の高い決済手段を構築することが重要です。支払い方法やクレジットカード・セキュリティ・チェックリストなどへの対応が整っているか、事前にしっかり確認しましょう。
他のEC構築方法との比較
比較項目 | WordPress + ECプラグイン | 専用のECカートサービス (例: Shopify, BASE等) | 大規模ECパッケージ (例: EC-CUBE, Magento 等) |
初期費用・月額費用 | 低め (無料プラグイン利用可) |
初期費用無料〜月額固定制が多い | 高め (大規模導入費用がかかる) |
カスタマイズ自由度 | 高い (プラグインやテーマ) |
中〜低 (サービス提供元の制限) |
非常に高い (専門開発が必要) |
運用の手間 | 中 (自力で更新・管理) |
低い (サポートに依存しやすい) |
高い (専門知識が必要) |
サーバー・セキュリティ | 自前で用意・対策が必要 | ほぼサービス側で完結 | 自前で用意・高度な対策が必要 |
国内外対応 | プラグイン次第 | グローバル展開に強いサービスもあり | 大規模対応には強いが開発コスト高 |
こうした比較からも分かるように、「ランニングコストを抑えたい」「自由度の高いサイトを構築したい」という方には、WordPress+ECプラグインという選択肢が適しています。専用のECカートサービスほど初心者向けのサポート体制は強力ではありませんが、国内でも利用者は多く、ノウハウが蓄積されているのも魅力です。
EC用プラグイン「Welcart」と「WooCommerce」を特徴比較
WordPressでECサイトを構築する際、代表的なプラグインとして挙げられるのが WelcartとWooCommerceです。ここでは両プラグインの特徴や機能、料金体系などを比較しながら、その違いを明らかにしていきます。
概要と特徴
Welcartとは
Welcartは、国産のECプラグインとして知られており、日本国内でのECサイト運用を強く意識して作られています。開発元の株式会社WelcartはWordPressの公式コミュニティでの活動も積極的で、日本語サポートや日本特有の商習慣(代引き・コンビニ決済など)への対応が手厚いことが大きな特徴です。
- 開発会社:株式会社Welcart(日本)
- リリース:2010年
- 日本向け対応:非常に充実(日本語サポート・決済手段多数)
WooCommerceとは
WooCommerceは、Automattic(WordPress.comを運営する企業)を中心に開発されており、世界規模で見ると最も利用者の多いECプラグインです。グローバルなECサイト構築向けに機能が豊富で、大規模な海外向け通販を検討している事業者に適している反面、日本の独自決済や配送に対する標準サポートがやや弱い面もあります。
- 開発会社:Automattic(アメリカ)
- リリース:2011年
- グローバル対応:非常に充実(多言語・多通貨対応)
機能・料金・サポートの比較
基本機能比較表
項目 | Welcart | WooCommerce |
日本語対応 | 標準対応(日本語ガイド充実) | 公式は英語中心(日本語情報は有志) |
管理画面のUI | 日本語中心でシンプル | 英語表記が基本 |
日本の決済手段 | 代引き・コンビニ決済や多数のクレジット決済に標準対応 | 別途アドオンやカスタマイズが必要 |
多言語・多通貨対応 | 別途拡張プラグインで対応可能(限定的) | 別途拡張プラグインで対応可能 |
テーマ・デザイン | Welcart専用テーマあり | WooCommerce対応テーマが多数あり |
拡張性 | 国産プラグインとの互換性が高い | グローバルな拡張プラグインが豊富 |
どちらも基本的には無料で利用開始できますが、決済連携や追加機能を実装するためのアドオンや拡張プラグインによって費用が発生するケースがあります。特にWooCommerceは、本体は無料でも一部機能を実装するための拡張プラグインが有料の場合も多いため、導入前に必要な機能を洗い出しておきましょう。
料金体系比較表
項目 | Welcart | WooCommerce |
本体利用料金 | 無料 | 無料 |
有料アドオン例 | ・有料拡張プラグイン(0円〜数万円/売切り) ・テーマ(数万円) |
・有料拡張プラグイン(1,000円〜数万円/年) ・テーマ(数千円〜) |
決済手数料 | 決済サービスに依存 別途決済会社と契約が必要 |
決済サービスに依存 別途決済会社と契約が必要 |
カスタマイズ費用 | 依頼先の開発費用により変動 | 依頼先の開発費用により変動 |
サポート費 | フォーラム+有料サポート(任意) | フォーラム+有料サポート(任意) |
日本市場でよく利用される決済手段(クレジットカード・コンビニ決済など)を標準で簡単に導入できるのはWelcartの強みです。一方、WooCommerceは多通貨対応や多言語販売を見据えた機能・プラグインが充実しており、海外にも販路を拡大するビジネスには向いています。
日本市場での使いやすさ
日本国内向けのECサイトで重要視される「日本語でのサポート」や「日本の商習慣への適合度」を考慮すると、Welcartは非常に導入ハードルが低いと言えます。操作画面の日本語対応はもちろんのこと、ユーザーコミュニティや公式マニュアルも充実しているため、初心者でも安心して使い始めることができます。
また、WooCommerceで日本市場に合わせた機能を整備しようとすると、有料アドオンの導入やカスタマイズが必要になるケースが多いです。特に配送や決済の選択肢は、標準機能よりもプラグインを追加して日本仕様に合わせていく形になるため、ある程度のWordPress知識や英語情報のリサーチが求められます。
このように、「まずは国内向けのECサイトを手軽に作りたい」「日本人エンドユーザー向けのUIやサポートが欲しい」という場合は、Welcartを検討するメリットが大きいでしょう。
どんなケースでどちらを選ぶ?
事業規模や商材による選び方
小規模ビジネス(個人事業主やスタートアップなど)
日本人ユーザーがメインターゲットの場合、扱う商品数や月間アクセス数もそれほど多くないうちは、Welcartで十分対応可能です。初期投資を抑えてECサイトを立ち上げられるので、運用開始までのスピードを重視したい方に向いています。
商品数の上限は環境によっても異なります。実際には5万点を超える商品で運用しているサイトもありますが、公式では1万点を目安としています。中規模ビジネス(国内外への展開を見据える事業者など)
国内に加えて海外ユーザーにも販売したい、あるいはサイトを多言語化したいなどの場合はWooCommerceが便利です。グローバルECの需要に応えられる機能やプラグインが豊富に揃っているため、将来的なスケールアップにも対応しやすいです。大規模ビジネス(商品点数多数・高トラフィックが予想される事業)
WordPress自体が高トラフィックに耐えうるサーバー構成を用意できるなら、WooCommerceを選ぶことで大規模運用も視野に入れられます。ただし、Welcartでも適切なサーバーを用意すれば大規模運用は可能です。いずれにせよ、専門家や開発会社のサポートを受けながら、インフラ面の強化やプラグインの選定を慎重に行う必要があります。
運用体制や予算による選び方
開発リソース・運用担当者が限られている場合
国産プラグインで日本語の情報が多いWelcartは、学習コストが低く、トラブル時にも日本語で情報を収集しやすい点が魅力です。また、機能拡張プラグインやカスタマイズサポートを利用すれば、開発リソースに余裕がない場合でも安心して運用できます。海外向け戦略や多言語対応を最重視する場合
WooCommerceなら標準で多言語対応を見据えやすく、様々な通貨や決済ゲートウェイと連携しやすいです。グローバル展開を視野に入れるのであれば、WooCommerceの拡張プラグインを組み合わせることで、一元管理しやすいECサイトを構築できます。予算と機能のバランスを考慮する場合
初期費用を抑えつつ最低限の機能でスタートし、徐々に拡張したいならWelcartが導入しやすいです。一方、WooCommerceは無料本体をベースに必要な有料プラグインを追加していくスタイルですので、運用期間が長期に及ぶほど費用が積み重なるケースも考慮しましょう。
日本市場特有の課題への対応
日本国内では、クレジットカード決済だけでなく、コンビニ決済や代引き決済の利用率が依然として高いという特徴があります。加えて、納品書・領収書の発行など、日本特有の商習慣を重視する取引先も少なくありません。
Welcartは、こうした日本の商習慣にマッチした機能が標準または拡張プラグインで用意されているため、実務上の手間を大きく減らせます。サポート窓口も日本語で対応しており、困った際に相談しやすい点も大きなメリットです。
ケース別おすすめ比較表
ケース | Welcartが向いている理由 | WooCommerceが向いている理由 |
国内向け小規模ECサイト | ・日本語対応、導入ハードルが低い ・クレジットやコンビニ決済が標準対応 |
・小規模なら導入は可能。 ただし国内向けなら別途日本対応プラグインが必要 |
海外展開を見据えたECサイト | ・拡張プラグインで対応は可能 ・ただし多言語には別言語用のサイトを別に構築するなどの工夫が必要 |
・拡張プラグインで多言語・多通貨対応が可能 |
拡張機能で独自運用をしたい | ・国産プラグインとの連携が多くカスタマイズ性も高い ・シンプルな構造で理解しやすい ・外部システム連携の事例が多い |
・豊富な海外製拡張プラグインがある ・外部システム連携の事例が多い |
専任の開発者が少なく、運用担当者が日本語メイン | ・公式ドキュメント・コミュニティともに日本語完備 ・有料サポートも日本語対応 |
・ 英語情報が多いので日本語だけだと調べにくい ・日本語サポートは有志が中心 |
大規模ECサイト (商品点数多数・高アクセス) | ・サーバー強化前提なら対応可能 ・国産サポート企業と連携しやすい |
・WooCommerce + 高性能サーバーで世界的大規模サイトにも対応可能 ・国際展開に強い |
自社に合うプラグインの選び方
WordPressでECサイトを構築するメリットは、費用を抑えながらも高いカスタマイズ性とSEO効果を得られる点にあります。その中でも「Welcart」と「WooCommerce」の2大プラグインは、多様なニーズに応える魅力的な選択肢と言えるでしょう。
-
Welcart
- 日本語サポートが充実
- クレジットカード決済や代引き、コンビニ決済など日本独自の商習慣に対応しやすい
- 初期導入のハードルが低く、学習コストを抑えられる
- 国内向け小〜中規模ECに特におすすめ
-
WooCommerce
- 世界的な利用者数No.1のECプラグイン
- 多通貨・多言語対応が充実し、海外展開しやすい
- 豊富な海外製プラグインを活用して大規模サイトを構築可能
- グローバル志向やスケールアップを視野に入れる場合におすすめ
ニーズに応じたEC構築方法を提案
自社サイトの運営方針やターゲット層、商品特性などを整理し、以下の視点でプラグインを選んでみてください。
- ターゲットユーザー:国内が中心か、海外展開も視野に入れるか
- 決済方法の選択肢:クレジットカード、代引き、コンビニ決済、Pay系決済など
- 商品数・アクセス数:小規模〜大規模までの拡張性
- 運用体制:日本語サポートの必要性、開発リソースの有無
- 予算と長期的なコスト:有料アドオンやサーバー強化費用の見積もり
具体的な開始ステップ
「まずは小規模な国内向けECサイトを始めたい」「日本語での操作やサポートが欲しい」という方は、Welcartを検討してみてはいかがでしょうか。導入ステップは次の通りです。
WordPressのセットアップ
レンタルサーバーの契約とドメイン取得を行い、WordPressをインストールします。サーバーによっては「WordPress簡単インストール」機能があるので活用しましょう。Welcartのインストール
WordPress管理画面の「プラグイン」→「新規追加」から「Welcart」で検索・インストールできます。有効化後、設定画面にアクセスして基本情報を入力してください。テーマ・デザインの設定
Welcart対応のテーマを利用することで、ECサイトに最適化されたデザインを手早く構築可能です。公式サイトやコミュニティから好みのテーマを探してみましょう。決済・配送方法の設定
代引きや銀行振込、クレジットカード決済、コンビニ決済などを必要に応じて設定します。Welcartでは、日本国内で一般的な決済方法が標準または拡張プラグインで簡単に導入できます。商品登録とテスト注文
実際に商品を登録し、テスト注文を行って問題なく決済・配送処理が流れるか確認します。テストで発見された改善点は、公開前に修正しておきましょう。公開と運用開始
テストが問題なく行えたらサイトを公開し、ECサイト運営をスタートします。定期的なプラグインやWordPress本体のアップデート、セキュリティ対策を怠らないようにしましょう。
もし不明点やカスタマイズ希望がある場合は、Welcartを熟知した開発会社やカスタマイズサービスの利用を検討するのもおすすめです。「日本語ドキュメントやコミュニティがある」という安心感は、EC初心者にとって非常に大きなメリットとなります。 また、ユーザーにとって最も不安なメンテナンスやセキュリティー関連もアウトソースすることが可能な「Welcartクラウド」サービスを利用するのもよいでしょう。
まとめ
WordPressを使ったECサイト構築は、コストやカスタマイズ性、SEOとの親和性など多くのメリットがあります。その中心的なプラグインとなるWelcartとWooCommerceは、それぞれが得意分野を持ち、ビジネスの目的や規模、ターゲットに応じて最適な選択が異なります。
- 国内向けでスタートアップや小規模、中規模ビジネスでの導入に適したWelcart
- 海外展開や多言語対応に強いWooCommerce
日本国内の商習慣に合わせてECサイトをスムーズに立ち上げたい方は、まずWelcartを検討してみるとよいでしょう。カスタマイズやサポートも日本語中心で進められるため、運用担当者の負担軽減にもつながります。特にWelcartクラウドの利用は、WordPressでのEC運営上最も不安な保守、セキュリティをカバーしてくれるものです。
ECサイトの構築は、どのプラグインを選ぶかで運用効率や顧客満足度が大きく変わってきます。ぜひこの記事を参考に、WordPressでのECサイト構築を前向きに検討してみてください。自社に最適なプラグインと運用体制を整えることが、ネットショップ成功の第一歩です。